思考置き場

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こういう考えもあるよってだけです。

RAGE Shadowverse VEC 調整の軌跡

noteに投稿したけどこっちでもこっそり載せておきます。

 

 

まずRAGEの持ち込みはこちら。 

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結果は5勝1敗でday1抜けでした(day2は私用により不参加)。

 

調整過程

プレリリース~環境開始数日

 プレリリース期間のリノセウスエルフの使用感を見て、環境初期はリノセウスエルフによって環境速度が定義されると予想した。初日の最速グラマスはリノで、その後疾走ビショップが流行ったことからもその予想は大体あっていた。今環境初回のJCG優勝はロイヤルビショップで、環境初期らしい伸び伸びとした構築だと感じた。

 自分はネクロマンサー→ドラゴン→ロイヤル→エルフ(リノ)の順に触る。この時点では取捨選択できるなほどどのデッキも弱くなく、どれもが役割を持つ可能性があると感じた。

週明け~JCG

 相変わらず世間的にはビショップがtier1なので使ってみることに。スフィンクスなど、従来の構築に対してかなり不満を感じたので2日間かけて改良した。

  水曜日、RAGE前最後のJCGではリノエルフとビショップが優勝する。またエルフのシェアも多く、準優勝も同じ組み合わせであることなどから、RAGEでリノセウスエルフが多いであろうと予想した。

補足1:リノセウスが多いと予想した理由はJCGの結果のみではなく、リノセウスエルフのデッキパワーが高いからというのもある。下で詳しく説明する。

〜金曜日

 疾走ビショップは確定として、木曜日時点でのセカンドデッキの候補は、

・リノセウスエルフ

・ネクロマンサー

の2つ。最終的にネクロマンサーを選択した。

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使ったデッキはだいたいこんな感じ。

 

どのようにデッキを選択したか

各種デッキの評価

1,リノセウスエルフ

 前期でも使われていたのだが対空射撃が追加されて速度が増した。もはやアンリミテッドともいうような尖り方で平均7~8ターンキルといった印象。疾走ビショップに対して不利で、ミラーが不毛なのが懸念点。

2,自然エルフ

 フェアリーとナテラの大樹を駆使して序盤のボード展開からオムニスに繋げるボードデッキ。多彩な除去と展開力が魅力だが、ラティカがフェアリーと大樹のどちらもを要求するのが重く、序盤にしっかり大樹生成カードをプレイしないとゲームできないという印象を受けた。メイやアイリーネなどプレイ枚数のシナジーもあるため3マナが手札に重なるだけで辛くなるのは良いデッキではないと評価した。

3,自然ロイヤル

  最初のJCGで優勝するなど、環境初期に活躍したが、実際に使ってみると相当無理しているデッキだと感じた。疾走ビショップのアニエスのような分かりやすいバーストカードがなく、丁寧に打点を刻んでいかないと勝てないデッキである。王の一閃を手札に加え続けてバフして点数を出すわけだが、そこまで簡単に勝てるわけでもないのである程度ボードも維持する必要があり、コンボデッキなのかテンポデッキなのか分からない中途半端なデッキだと評価した。

4,自然ドラゴン

 プテラノドンなど強いカードが多く、デッキとしても悪くない印象を受けた。母なる君を最も自然に入れられるデッキ。序盤を乗り切ればボード形成と継続打点のある優秀なデッキなのだが、とにかく疾走ビショップとリノセウスエルフに対して不利で、それはデッキの性質上覆らない。

補足2:ビショップに対しては言うほど不利では無いかもしれない。ランクマッチで使っていた当時はもう少し前のめりで攻め続けようとするタイプのビショップが多く、後手をとった時に全然勝てなかった。

5,自然ネクロマンサー

 ヘリオ、ルベルなどパワーの高い新カードも多くケルベロスなどの以前からの強カードもあり、またトートのおかげで時間制限も得た。最初はリノセウスエルフに押される形でミーノなどを入れた早いタイプが主流だったが、ビショップの速度が遅くなり、そちらにしっかり対応するためにネクロマンサーも母なる君を多投するなどの変化をした。ただ回復がさほど多くなく、後手の時にはどうしてもライフが減ってしまうことや、リノセウスエルフに対してもある程度やれるものの基本的には不利であることなどの懸念点もあった。

補足3:セレスを入れるとビショップに対する相性は良くなるだろうと思う。自分はRAGE当日に初めてセレスについて聞いたので調整時には考慮に入れてなかった。

6,疾走ビショップ

 文句なしの今期最強デッキ。疾走打点の枚数がここ最近のデッキで最も多く、簡単に凄まじい点数が出るにも関わらず、回復と除去によりロングゲームもすることが出来る。構築とマリガン、次いで黄金都市を出すターンが難しい。最初は黄金都市のバリューを出すためにスフィンクスを入れた構築が主流だったがミラーで不要であることが分かると少しずつ抜け始め、最終的にクルト、母なる君が最大数投入された形が一般的となった。

7,エイラビショップ

  疾走ビショップが最強なのでわざわざ使う意味がないという評価だった。特に今期のエイラはレフィーエの不在により守護と回復の両方が少ない状態であり、勝つために安息の領域を3枚入れなければならないというのはどう考えてもデッキ自体に問題がある証拠である。疾走ビショップやリノセウスエルフに対して有利という意見もあったがその2つの組み合わせが優勝した水曜日のJCGにおいても目立っておらず、自分で使う気さえ起きなかった。

補足4:新しいアーキタイプを思考する場合には参考にならないが、既存のアーキタイプの強弱を測る目的においてJCGやレートなどの集合知は参考にすべきだと考えている。JCGでは既存のアーキタイプの強さを、レートではデッキ相性を知ることが可能である(他のクラスの使用率が変動しない中でクラスAの使用率が減りクラスBが増えればBがAに対し有利であると仮定、推測できる)。

8,その他:機械デッキ

 補足4で説明したことがそのまま適用できるものの一応注意が必要。というのもエイラビショップや機械ウィッチは前期の環境上位デッキなので一般的に記憶に残っている、つまり今期においても全体的にある程度試行されているデッキと言えるが、前期の環境下位デッキ、機械エルフや機械ヴァンパイアなどは今期において試行数が少ない可能性があるからである。とはいえ前期において欠陥があったために環境下位であったデッキが、追加カードがない中で上位に食い込めるとは到底思えなかった。基本的に追加カードがないデッキタイプが強いことはない。

補足5:上の説明は感覚的な話なのでもう少しだけ深堀りすると、機械デッキは大体がテンポデッキであり、リソース面に難がある。一方自然デッキは大樹をプレイするために1マナ払っているためテンポに関しては損をしていると言えるがそういうことは当然のこととして、その上でそれ以上の得をしているデッキが環境上位にいるわけである(アニエスが分かりやすい例である)。つまり機械デッキと自然デッキを比較したときに、前者はただのテンポデッキだが、後者は1ドローできるテンポカードを持つデッキと表現でき、どちらが優秀かは明白である(もちろんこれは相当単純化しているので全てをこうは処理できないが、つまりリソース面で差があるわけである)。

補足6:機械エルフのみ、対空射撃という追加カードがあり、かつ自然エルフと差別化できるデッキであった。

RAGEのメタゲーム予想

 メタゲームの予想は必須事項である。これをしないとクラスも選べないし構築も定まらない。

 今回は疾走ビショップ確定からスタートした。オールレンジで戦えて不利がないからである。また構築幅の広さとプレイ難易度からミラーがそこまで嫌ではない。RAGEでも99%がこのタイプのビショップを選択するだろうと予想した。

 次にセカンドデッキ予想。今期は使用に耐え得るデッキタイプが多く、候補はリノセウスエルフ、自然エルフ、自然ドラゴン、自然ネクロマンサーまでである。逆に自然ロイヤルを除いた理由はほぼ上で書いたことそのままだが、①デッキ自体が無理をしていて強くないと感じた、②ランクマッチやJCGでも活躍していないことから今(RAGE直前)の環境に合っていないもしくは弱いアーキタイプである、この2つが挙げられる。感覚的に弱いデッキであり世間的にも弱いと評価されているデッキならば大体その評価に間違いはなく、選ばれることはないだろうと予想した。

 そこで上記4つに絞られるが、やはりその中で頭一つ抜けているのはリノセウスエルフである。リノセウスエルフはセカンドデッキ群に対して明確な不利がないのも追い風だ。一方で懸念点は疾走ビショップへの不利だが、かといって他のデッキを選ぶ理由もなく、上振れれば不利でも関係なく倒すことができる。当日に期待しよう。……というのが一般的な考え方だと予想した。

 ちなみにセカンドデッキのシェア率は、リノセウスエルフ>ネクロマンサー>自然エルフ>ドラゴンだとした。

取捨選択

  最初に、水曜日のJCGで優勝、準優勝したビショップのデッキリストが40枚同じだったので、そのリストを仮想敵とした。

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仮想敵

 またドラゴンはデッキ評価の段階でビショップ、リノセウスエルフのどちらもに不利であると評価したため、選択する理由がなく、切り捨てた。

 さて、エルフ2種とネクロの中で何をどういう戦略で選ぶか。

 

ビショップ+自然エルフ

自然エルフはビショップに有利か

 最初に自然エルフの情報を聞いた時は「ビショップに有利」という話だった。自然エルフの序盤のボード形成能力は全クラス一で、一方のビショップは序盤に黄金都市を出す、つまりどこかのターンに2マナ分パスをする必要があり、その差で勝てるのではないかと予想した。確かにブルームスピリットは強力で、さながら令和のゴブリンリーダーである。ビショップは対面のエルフが自然かリノセウスか分からない時にクルトをキープするかというと、そんなことはできない。だが自然エルフは基本的に盤面からしか打点が出せないデッキであり、一度クルトで返すと一気に苦しくなる。

 また問題なのは後手で、先手はある程度戦えると踏んでいたためルームマッチにて後手固定で確認したところ、ビショップに対し0‐5した。

自然エルフはリノセウスエルフに有利か

 リノセウスエルフのAoEはアリアの旋風のみで、フェアリーにはダメージが入らないため自然エルフが有利なのでは、と思ったものの、実際には有利なのはその点のみで、疾走やバーンでのダメージがないのがかなり致命的だと感じた。序盤のブルームスピリットによる横展開の機会を逃すと盤面で作れるクロックは貧弱で、多少ボードを残しても何も起こらない。後手はより厳しいため、お世辞にも有利とは感じなかった。

 

 総評として、メタデッキとしてはどちらに対しても微妙で、デッキとして欠陥を抱えていることも考えると選択するべきではないとした。

ビショップ+リノセウスエルフ

ミラーに逃げ道はないか

 不殺の円陣など一応のメタカード……と言えるのか怪しいカードがあるものの基本的にはコンボ用のカードを多く引いたもの勝ちという感じで、不毛なミラーは避けられなかった。

ビショップに対する不利を覆せないか

 仮想敵であるビショップがクルト3枚母なる君3枚のかなり重い構築なのであるいはと思いルームマッチなどで試したが先手後手に関わらずあまり変化はなく、希望を見出せなかった。

 

 総評として、リノセウスエルフのデッキパワーは高いので他にデッキ選択の余地がないならば選択する組み合わせであるとした。

ビショップ+ネクロマンサー

リノセウスエルフに対する不利を覆せないか

    ミーノやゴブリン、カムラを増やして雑アグロする線は一応思考した(ランクマッチだとそれなりに勝てる)ものの大した打点にはならずひっくり返されることになる。とはいえケルベロスなどの横展開が続くことは比較的有効で、標準的な動きをされれば不利だがリノセウスエルフが下振れた時にしっかり勝てる性能は持っていることを確認した。

ビショップとの相性はどうか

    セカンドデッキ群の中で最も疾走ビショップに対して戦えると思っていたので検証すると、先手4-2後手2-4くらいでほぼ予想通りの結果になった。ビショップの構築によって微妙に変動するが、仮想敵のビショップには法典が採用されていないこともあり悪くはない相性になるだろうと予想した。

 

    総評として、かなり微妙な選択ではあるもののビショップ+リノセウスエルフの場合よりも僅かに全体勝率が伸びるだろうと考えた。

補足6:BO3における組み合わせはここまで全て脳内でシミュレーションしたものである。調整においてBO3の練習は必須事項ではないと考えているが、これはBO3がBO1の積み重ねに過ぎないからである。つまりデッキごとの相性さえ分かっていればBO3用の特別な練習をすることなく2デッキを選ぶことができる(もっと言えばこういった短期間のRAGEで調整期間にBO3をやるのは時間の無駄とさえ思っている。BO3は長い)。実際今期初めてBO3をしたのはRAGEの初戦だった。

補足7:補足6に関してより細かい話をすれば、BO3における先出し・後出しが統計的に明確にあるならBO3はすべきである。しかし今回レートのような無限試行の場はなく精々TLでBO3募集をする程度なので統計的な出し順に関して確定的に得られるものはないだろう。

補足8:補足7で「統計的」としたが、出し順に関しては完全に心理的なものであって、相手の出し順が分からない時にこちらの出し順の戦略は存在しない。心理的に多いパターンを集計した統計はある程度有効である。

デッキ選択と構築

ビショップ

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デッキコンセプト

 ミラーを第一に考えて先手で負けないことと削り切ることを意識した。まず、ミラーでは後手が有利だと感じた(これはチーム内でも話題になったので概ね間違ってないと思う)。理由として考えられるのは黄金の鐘とナテラの大樹の存在。後手のほうが初手の枚数が1枚多く、黄金の鐘を置ける確率が高い。黄金の鐘は遅効性のドローソースであるため、早期における分だけ次のドローソースにつながりやすく、結果的に後手のほうがリソースが増えることになる。大樹も同様で、1枚目の大樹は即座にドローに変換されることはなく、1ドローに変わるのは2枚目以降である。ミルフィを除くとデッキ内の大樹生成カードはそこまで多いとは言えないため、手札が多い後手のほうがドローにつなげられやすいということになる。

 では先手の利を活かしてボードを展開すればいいと思うかもしれないが、そこに刺さるのがクルトなのである。クルト標準搭載によって進化権の多い後手のほうが1回AoEを打てる回数が多くなるわけだ。

 先手がリソース問題を抱えているため、本来強いカードであるはずのムニャールやアニエスなどの攻めのカードが先手でキープしづらくなっている状態になっており、先手で単キープできるカードが黄金の鐘くらいしかなくなってしまう。そうした問題を解決するためのカードとしてワンダーコックを採用した。

補足9:そもそも先後に関わらずビショップはリソースが結構きついのだが、その理由としてはデスティニーウイングナイトやムニャールという1コストカードがある。これらは強力なボードを生み出すことができるが1コストという軽さゆえにプレイしやすく、手札が減りやすい。

 またミラーは低確率で超ロングゲームになるが、今回はあまりそこを考慮せず、削り切ることを意識したほうが良いと感じた。ロングゲームになるのはジャスティス・マナを10ターン目以降に複数枚打てるなど一定の条件を満たす場合であり、基本的には10ターン前後で試合が決まる。ロングゲームを自分から考えた構築にするよりは軽い除去とリソースカードを積み、デッキを綺麗に回したほうが良いと考えた。

 

クルトについて

 自分はこのデッキをずっと「疾走ビショップ」だと思って使っていたため、クルトを最大枚数採用することに対して否定的だった。クルトの長所としてはAoEと回復が挙げられるが、逆に短所としては①必要対面が少ない、②不要対面が多い、③先手で弱いなどがあり、特に3つ目、先手で弱いことが今回の自分のデッキコンセプトと合わないことを理由に採用を見送った(実際欲しいと思う状況もなかった)。

 チームではクルトの採用に関して「RAGEだから入れたい」という意見もあったが、明確に欲しい対面がある程度存在するだろうと予測できない限り入れるべきではないはずだ。「RAGEだから」という考え方は、わかりやすい強さにすがろうとするプレイヤーの逃げである。

ネクロマンサー

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 ネクロマンサーの構築はビショップと違いそこまで考えたわけではなく、ランクマッチで使っていたものをほぼそのまま持って行ったというのが正しい。そのため特に説明することもない。セレスなど、もう少し色々考えてもよかった。

結果

1回戦

B-E(リノ) 後手 〇

Nc-E 後手 ×

Nc-B 後手 ×

2回戦

B-E(リノ) 後手 〇

Nc-E 後手 〇

3回戦

B-B 先手 〇

Nc-B 後手 ×

Nc-Nc 先手 〇

4回戦

B-E(自然) 先手 〇

Nc-E 先手 〇

5回戦

B-E 先手 〇

Nc-E 先手 ×

Nc-B 先手 〇

6回戦

B-E 後手 〇

Nc-E 先手 ×

Nc-B 後手 〇

総合5-1

B6-0,Nc5-5

先手8後手8

 

終わりに

 前回や今回といった期間の短いRAGEは考えることが多く、どうすればいいか分からないことも多い。また普段のRAGEにおいても、どうやって調整すればいいかあまり認識していないまま「調整」という言葉を口に出している人もいるのではないかと思う。今回の自分の記事は方法論を直接語ったものではないが、今回の具体的な調整の過程を記すことで何かしらの参考になればいいと思っている。